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活動報告

第一回 ~Passive × Energy Design~1985アワード

2023年4月21日(金)

2023年1月25日に、第一回Passive × Energy Design 1985アワードを開催いたしました。

2007年~2020年の間、野池政宏氏を代表とする自立循環型住宅研究会(現在は閉会)にて毎年開催されていた「自立研アワード」を引き継ぐ形で、小さなエネルギーで豊かに暮らすことのできる家づくりに取り組む住宅事業者のさらなる技術・知識向上や切磋琢磨の場として開催されるもので、今回が第一回目となります。
当日は、新大阪の会議室にて基調講演を実施したのち、エントリー作品のプレゼンテーションが行われ、現地ならびにオンラインで80名の参加者に視聴されました。

【日時】2023年1月25日(水)10:00~17:30
【開催場所】新大阪丸ビル別館&オンライン視聴
【エントリー作品】Forward to 1985 energy life 会員から6作品(事前エントリー)
【基調講演】
前 真之 氏|東京大学大学院 工学系研究科 准教授

【審査員】
・前 真之 氏|東京大学大学院 工学系研究科 准教授
・辻 裕介 氏|一般社団法人Forward to 1985 energy life 代表理事
       ひと・住まい研究所 主宰/自立研アワード受賞者
・米谷 良章 氏|一般社団法人Forward to 1985 energy life 理事
         米谷良章設計工房 主宰/自立研アワード受賞者
・川端 順也 氏|一般社団法人Forward to 1985 energy life 代表理事
         一級建築士事務所 Pleasant Design 主宰 /自立研アワード受賞者
・その他の全参加者

◎当イベントの案内→ PDFを表示します

【審査方法】
事前にエントリーをし、作品をお送りいただいた6社による当日プレゼンテーション(発表30分・質疑応答&講評10分)を行い、
審査員が次の1~7項目に対して各プレゼンテーションを評価し、最も得点の高い作品に投票。それら得票数により賞を決定する。

1.エネルギー消費量(計画内容・実測結果を合わせて)
2.温熱環境(計画内容・実測結果を合わせて)
3.パッシブデザイン
4.暖冷房計画
5.プランニング(心地よさ・暮らしやすさ)
6.持続可能性(サステナブル)
7.プレゼンテーション(発表内容)

【受賞者】
大賞|「早起きは三文の徳?」4地域高原に建つ G2 ZEH 住まいの考察 / 株式会社 近藤建設興業(岡山県)
優秀賞| パッシブデザインの進め方と事業化サイクル ~「蓄熱サンルームのある家」SIM・実測・検証・修正~/
     株式会社 PASSIVE DESIGN COME HOME(愛知県)

【会場レポート】
当日は大雪の影響で交通機関が大幅に乱れる中ではありましたが、プログラムの順番を変更しながら定刻通りにスタート。(足元が悪い中、現地にお越しいただいた皆様、ありがとうございました。)
以下、発表内容(概略)を写真と共にご紹介します。

<第一部>
基調講演:「パッシブデザインと空調・換気計画について」
前 真之 氏(東京大学大学院 工学系研究科 准教授)

「みんあで力をあわせて、日本の家をよくしていこう!」
講演では冒頭、住宅のつくり手の進む道を山に例え、まずは、断熱・設備・太陽光で8合目まで性能を担保したうえで、9合目・10合目までは各々が自由に取り組もう!と進言。基本を担保したうえでの9合目10合目で個性を持つことの必要性について言及され、8合目までに必要となる項目と、その先の9合目10合目に属する項目を仕分けして提案いただきました。特に住まい手に見える「温度」と「電気代」の結果がしっかりと出ていることが重要と締めくくられ、この後のプレゼンテーションに期待を寄せられました。


<第二部>
エントリー作品のプレゼンテーション
◎発表1|ゼロエネルギー計画と実施 / 株式会社 大喜(広島県)



株式会社大喜 細澤さんによる発表。
発表物件:省エネ地域区分:6地域、UA値0.37、C値0.46、PV10.5KW搭載のZHE新築住宅。第一種換気、暖房は床下エアコン、冷房は吹抜けの壁掛けエアコンを使用。実測結果によると、予測した電気代より年間で安く抑えることができたとのこと。冬は日射熱を効率よく利用できており、エアコン使用で平均室温22~24℃と室温が安定している。1985家族判定は建物本体で、夏は標準家庭の51%(日射遮蔽が効いている)、冬は標準家庭の70%のエネルギー消費量で、24時間床置きエアコンを稼働していることが響いた。今後はエアコンスケジュールの改善と基礎断熱の向上など、今後も実測を重ねながら性能向上に努めたいと結びました。




◎発表2|市販壁掛エアコン×床下熱交換換気 による全館空調の検証 モデルハウス兼自邸編 / 大竹工務店(茨城県)


大竹工務店の大竹俊光さんによる発表。
発表物件:省エネ地域区分5地域、日射地域区分A3/H3、UA値0.24、ηAC値1.0、ηAH値1.2、C値0.1、PV8.82KW、4人家族のZEH住宅(新築・木造2階建)、第一種交換換気、床下エアコン(暖房用)・小屋裏エアコン(冷房用)による全館冷暖房。
高気密高断熱性能と、日射遮蔽の効果もあり、外部の影響を抑えられている。冬の日射取得のために西側の窓も日射取得型のガラスにしており、夏の日射遮蔽ができる仕掛けを施している。小屋裏からの冷気を効率よく居室に届けるための工夫(温湿度等の観察と共にトライ&エラーを実施)についても報告。また電気使用量が一般家庭と同等になっているため、室内環境を考慮しながら電気使用量を削減する取り組みを行いたいとした。冬に関しては、暖房能力2.2kWの床下エアコンで全館暖房ができている感覚だが、場所によっては温度差があるため課題を感じる。また日射取得のある時間帯と室温の比較により、エアコンの運転スケジュールに改良の余地を感じている。全館暖房だが、エアコンを停止した実測も行い、暮らし方による細かな工夫も行っていきたい。1985アクションナビの入力値は、合計で標準家庭より-45%、電気使用量は-72%(PVあり)となっている。全体の電力エネルギー自給率は125%でZEHは達成されている。まだ1年経っていないため、引き続き実測を行っていきたいとした。また、電力消費の多い電気系統と時間帯についての考察や、温湿度以外にも、CO2濃度も併せて計測されておりました。


 

◎発表3|パッシブデザインの進め方と事業化サイクル ~「蓄熱サンルームのある家」SIM・実測・検証・修正~/ 株式会社 PASSIVE DESIGN COME HOME(愛知県)



株式会社PASSIVE DESIGN COME HOMEの木村真二さんによる発表。
発表物件:省エネ地域区分6地域、日射地域区分A4/H3、UA値0.38、ηAC値0.8、ηAH値2.6、C値0.48、第一種換気システム作用物件。
目標とする室温・一次エネルギー消費量・BEI、パッシブデザイン設計ルールについての社内の設計ルールを披露され、それに基づいた設計検討の過程と実測結果等からのトライ&エラーを報告。冬の蓄熱サンルームにおける蓄熱と各部屋への送熱について、消費電力実測結果についての考察、暮らし方による実際の室温データにおける考察等を披露。今後はさらに細かく計測を行い、分析に活かしていきたい。また発表物件へのPV設置、設備の使い方や暮らし方のアドバイス、AI制御も視野に入れながら設計による省エネ向上を進めたいと締めました。




◎発表4|1985アクションをつなぐ / 株式会社 育暮家ハイホームス(静岡県)



4年前に事業継承をして代表となった、株式会社育暮家ハイホームス 寺坂磨さんによる発表。
Forward to 1985 energy lifeに初期から参画し、地域アドバイザー拠点として活動されている育暮家ハイホームスさんが、当会の目指す目標に向けて、会社としてどのように取り組んでおられるのかを細やかに披露。自社で開発したアプリを使い、住まい手理解と実践を促し、実測・PDCAサイクルを回す取り組みをまとめた。
1985家族を達成するには、コストバランスも鑑みながら高い性能を担保しつつ、設備についても細かく検討・検証・改善を行う必要があるとし、目標とする室温、BEI、エネルギー消費量、光熱費の解説と、それに基づき計画された新築物件、リフォーム物件を複数紹介。
つくり手が想定した暮らし方通りに住まい手が実践してくれるとは限らず、暖房はあまりかけず、冬場夜間が15℃を下回ってしまっていたり、レースカーテンを閉めがちで日射取得が満足にできていなかったり、といったことが発生。住まい手に細かく声をかけ、細やかな観察から丁寧にプレゼンをし、住まい手に能動的に参加してもらい、段階的に取り組んでもらえるような、様々な切り口のアプローチが必要。根拠を基に住まい手に寄り添った活動が、「1985家族」の創出に繋がると訴えました。




◎発表5|1985家族を目指して~1985地域アドバイザー拠点登録する前の住宅で検証してみた~ / 株式会社 ヒロ建設工業(愛媛県)



建築業界に入って2年、今年Forward to 1985 energy lifeの取組を知ったという、株式会社ヒロ建設工業の越智魁さんによる発表。
発表物件:省エネ地域区分6地域、日射地域区分A4/H2、UA値0.39、Q値1.36、C値0.36、ηAC値1.5、ηAH値1.3、第一種換気、PV5.04KW、壁掛けエアコン2台、南側が隣家と近接する4人家族の新築住宅(木造2階建て・築3年)。
建物計画の解説ならびに、実測結果(エアコンを使用する時間帯の調査と温湿度の計測、日射取得が十分にできない物件での夏冬の室温・エネルギー消費量の実測・分析も含む)を発表。
アクションナビによる1985家族判定は、合計で標準家庭に比べ-74%、電気は-102%(2021年年間、PV込)。建物本体における同判定結果は、合計で標準家庭の61%、電気のみで83%であり、売電を考慮せず1985家族を達成するためには何ができるかを検討。①屋根の断熱性能を強化 ②吹抜け窓に日射遮蔽部材を設置 ③お湯の使用時間の改善 ④家電の無駄遣いをなくす努力 を挙げ、さらなるアドバイスを参加者に投げかけた。
前先生からは、様々な観点から見てコストパフォーマンスの良いものから順に、優先順位をつけて取り組むことを提案いただきました。




◎発表6|「早起きは三文の徳?」4地域 高原に建つ G2 ZEH 住まいの考察 / 株式会社 近藤建設興業(岡山県)



株式会社近藤建設興業 近藤直岐さんによる発表。
発表物件:省エネ地域区分4地域、日射地域区分A3/H2、それらが秋田市と同等の高原地帯に建つお住まい。
UA値0.33、Q値1.06、C値0.18、ηAC値0.7、ηAH値1.8、PV9.0KW、誘導基準BEI0.58、年間暖房負荷24.25MJ/㎡、年間冷房負荷49.17MJ/㎡、第一種換気使用、5人家族のZEH住宅(新築・木造2階建て)。
断熱性能をG2にした経緯や社内のパッシブデザイン設計ルールに基づく物件計画解説、エアコン運転スケジュール・光熱費シミュレーションなども併せて披露。
農家を営まれるご家族で早寝早起きであり、その暮らし方が快適性と省エネルギー性へ与える影響があるかもしれない、という観点から、様々な実測・検証をまとめた。
暖冷房設備の使用状況、窓の開閉状況のヒアリングと温湿度の実測データ、平日と休日の温度変化、部屋ごとの温度変化、電力使用量、それぞれ暮らし方と併せて見解を示した。同社では「暮らしコンサルティング」になること掲げているため、実測結果を基に、再度ホームズ君にてシミュレーションと検証を行い、暮らし方の提案に繋げている。アクションナビによる1985家族判定は、PVありで標準家庭より-112%、本体性能で標準家庭の65%。
これらの実測結果を基にしたタイトルへのアンサーとして、「暖房期間に早起きをすると、確かに三文の徳である」という結論で締めくくりました。また実測データに基づくパッシブデザインアイテムの紹介も併せて行われました。


 



各作品には、参加者からの質疑や特別審査員からの講評で10分ほど設けました。特別審査員は、ゲスト審査員の前先生と、本アワードの前身である自立研アワードの受賞者であり当団体の理事が務めており、鋭い質疑内容や、深い考察、アドバイスを添えた講評が伝えられました。


<授賞式>
冒頭にお伝えした通りの審査により、受賞者は下記の通りとなりました。
大賞|「早起きは三文の徳?」4地域高原に建つ G2 ZEH 住まいの考察 / 株式会社 近藤建設興業(岡山県)

受賞者には、盾と副賞が贈られました。
副賞:
・日射コントロール体感ボックス(株式会社LIXIL様より)
・Energy ZOOの初期導入費と一年間の月額費無料(株式会社FANFARE様より)
・室内用空気質測定計 IAQ計(株式会社マーベックス様より)



優秀賞| パッシブデザインの進め方と事業化サイクル ~「蓄熱サンルームのある家」SIM・実測・検証・修正~ / 株式会社 PASSIVE DESIGN COME HOME(愛知県)

受賞者には、盾と副賞が贈られました。
副賞:日射コントロール体感ボックス(株式会社LIXIL様より)


<総評>

前真之氏:
発表を聞き、みなさん誠実に設計し、丁寧に結果を確認しようとしていると感じた。
健康で快適で安心な住宅を日本でどこでも手に入れられる環境をつくりたいと思うが、そのためには、皆様のような取組はこれからますます必要となってくるし、素晴らしいものである。シミュレーションですべてが把握できるわけではない。影響が大きいところから抑えていき一定の性能を担保した上で、最後は現場での調整が必要となる。シミュレーション、実験、実測、皆で取り組みながら共有し、そのうえで各々の個性を伸ばしていってほしい。

辻裕介氏:
これまでの自立研アワードから格段に発表内容のレベルが上がった。すべての発表において、多様な視点でどのようにバランスをとっていくかという観点での取組みや考察が見受けられ、濃い内容の発表を見ることができた。発表者にとっても、資料をまとめ、言葉にし、アドバイスをもらい、参考になったことは多いだろう。今回残念ながら受賞を逃した方もリベンジしてほしいし、新たな発表者にも期待したい。


<最後に>
今回の発表に向けて、発表者による準備だけでなく、地域ネットワーク(1985会員を中心とした地域ごとのネットワーク)内における発表内容の精査やプレ発表等も行われ、チームでサポートする形ができていました。また当日、それぞれの発表を経て、観点がブラッシュアップされ、新たな閃きやアドバイスに繋がることもありました。
実測した数字を読み解くだけでなく、敷地環境や暮らし方に応じた柔軟な対応が、数字や理屈を超えた快適性に繋がる提案も見受けられ、新しいフェーズに入ったように感じました。

発表いただいた皆様、様々な意見をお寄せいただいた審査員ならびに参加者の皆様、どうもありがとうございました。
次年も開催する予定ですので、エントリーを検討されている方は、ぜひ夏前から実測準備をお願いします。


◎大賞作品をYouTubeで紹介しています。当団体の公式YouTubeはこちら→ https://www.youtube.com/live/9wUCVq0SOKI?feature=share

◎新建ハウジングの取材を受けました。



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