法人について ABOUT

Home法人についていいだしっぺからのメッセージ

いいだしっぺからのメッセージ

代表メッセージ

私は2003年頃から住宅(家庭)におけるエネルギー消費のあり方に関心を向け、住宅建築や住宅での暮らし方について調査研究、提案、アドバイスなどを行ってきました。ただし、私はいわゆる研究者ではありません。多くの仕事は、専門家・研究者と呼ばれる立場にある人から提示された”結果”に基づき、それをわかりやすく翻訳して、住宅建築に携わる工務店、設計事務所、建材・設備メーカーや流通の立場にある人、また一般の生活者に伝えるという内容です。このような仕事をしている人はほとんどいないからか、とくに最近では私からの情報やメッセージに関心を持ってくださる人が増えています。
エネルギー問題は、大きく「エネルギー資源の枯渇」「エネルギー安全保障」「地球温暖化」に関わる問題であると考えてよいと思います。そこに、少し毛色の違うものとして「原子力発電の扱い」を加えるのが私はよいと思っています。それぞれに様々な意見があり、こうした問題を解決する方法や評価する方法についても様々な意見があります。しかし、ここで間違いなく言えるのは「省エネルギーを進めることは、これらの問題を解決させる方向に向かう」ということです。

だから私は、縁あって首を突っ込んだ「住宅分野」の省エネルギーにつながる仕事をしてきました。「新しいエネルギー転換事業や新しい設備や装置の研究開発、自然エネルギーによる発電などの研究開発には携われないけれど、住宅分野の省エネルギーに向かうお手伝いはできる」と考えて仕事をしてきました。

こんな私が今回の福島原発事故を目の当たりにし、言いようのない衝撃を受けました。高校生の頃からエネルギー問題に関心を持ち、当時「夢のエネルギー」として注目されていた核融合を大学では研究しようと思っていました。実際にはそうはならなかったのですが(理学部物理学科に入学し、宇宙線の研究室に入りました)、ずっと原子力発電のことは気になっていました。私なりに原子力発電に対するスタンスも決めていました。しかし、先に述べたようにエネルギーに関わる仕事をしながらも、原子力発電のことに直接触れるようなコメントやメッセージは出してこなかったのです。

「原子力発電」「原発」という言葉はなかなかデリケートな言葉です。とくに「ゲンパツ」という響きに対して触れたくない、避けて通りたいという感情が湧く人が多いと思います。それはおそらく「反ゲンパツ運動」に対して、ヒステリックで独善的な印象を持っているからでしょう。

かく言う私もそういう印象を持っています。一部の反原発運動や反原発の活動家(その多くは研究者ですが)には共感し、尊敬もしていますが、全体としては「何か共鳴できないなあ」と思ってきました。

私が原子力発電のことについてあえて触れてこなかったのは、「ゲンパツ」という言葉を出した瞬間に、相手との溝ができてしまうのが嫌だったからです。本当は強引な原子力発電推進の問題点を伝えたかったし、一方ではとくにエネルギー安全保障上、国策としての原子力発電推進が必然の流れかもしれないことも伝えたいと思っていました。またそこでは原発事故のリスクについてもできる限り客観的な情報を提供したいと考えていました。要するに、私は「ゲンパツ」について真面目で深い議論がしたかったのです。

でも、それは結局やらないでここまで来ました。記憶は定かではありませんが、そうした議論に持ち込もうとして”引かれてしまう”という経験が何度かあったのかもしれませんし、言い出そうとしてやめたのかもしれません。

結局のところ「省エネルギーに関わる仕事をして、その結果原子力発電が”自然に”不要となればいいなあ。少しでもそれに貢献できればいいなあ」という思いで仕事を続けてきました。もちろん先に述べたように、私が省エネルギーに関わる仕事をしているのは「原子力発電がなくなる」ということだけを目標にしているのではありませんが…。

だから今回の福島原発事故は私にはとても重かったのです。自分なりには原子力発電についてどんな距離感でいようということは決めていたし、あえてゲンパツのことは言葉に出さないというスタンスも決めていたのですが、今回の事故で「それが間違いだったのでは?」という気持ちがもたげてきたのです。私が原子力発電の議論をふっかけ、それによって何かが変わったという可能性はゼロに近いと思います。そんなに影響力のある立場にはいませんから。でも、私にはどうしようもない後悔の念が強くなってしまったのです。

「Forward to 1985 energy life」というメッセージを出すことは、原子力発電をなくすことだけが目的ではありません。でも、いま原子力発電のことに触れないメッセージを出すことは私にはできません。先には「原子力発電について議論したかった」と書きましたが、このメッセージはただ議論することだけを目的にしたものでもありません。議論しながら、「結果」を出すことが目的であり目標です。

私もそうですが、何か自分に引っかかる意見に触れたとき、「どんなヤツが言っているんだ?」ということが気になるはずです。意見は純粋に意見として評価すべきだという気持ちはあるのですが、やはり「誰が言っているか?どんな人が言っているか?」が気になります。だから以上のような文章を書きました。言い足らないこともたくさんあります。でも書けばキリがないのでこのへんにしておきます。これ以上のことが知りたくなったら、うまく私を知っている人を探して「野池ってどんなヤツ?」と聞いてください。

ただ、私は 「Forward to 1985 energy life」というメッセージとそのシンプルな内容は、私の人格や仕事の内容、立場などを軽く飛び越えた力があると思っています。それにシンプルに反応していただくことを願います。

2011年5月

野池政宏

2016年になって思うこと

先の文章を書いたのが2011年5月。東日本大震災と福島原発事故からまだ2か月しか経過していない時期です。あれから5年経ちました。

「家庭の省エネ運動を始めるからとにかく集まってほしい」と全国に呼び掛け、名古屋市で「秋の大集会」を開催したのが2011年の9月。500人ほどの人たちが全国から駆け付けてくれ、とても感激しました。その後すぐに「暮らし省エネマイスター検定」の試験を実施し、そこから「1985地域アドバイザー拠点」に手を挙げてくれる会社が多数出てきてくれました。いまでは暮らし省エネマイスターの資格を持っている人は567名に達し、1985地域アドバイザー拠点は100を超える数になり、この活動も全国に広がるようになっています。

秋の大集会は2014年から「全国省エネミーティング」に名前を変えましたが、1回目の名古屋市のあとさいたま市、神戸市、福島市、長野市と開催を続け、今年の2016年は静岡市で開催します。年々内容も充実し、参加者にも好評です。

他に取り組んできたこともたくさんあり、ここでは書ききれないほどです。おそらく住宅業界ではかなり知られた活動となり、一部の行政や環境団体、環境リーダーの方にも少しずつ知られるようになってきました。活動を支える人材や仲間の確保、仕組みづくりに関しては、相当に充実した5年間だったと思います。よい出会いもたくさんありました。

しかし、この活動が目指す「2030年頃までにすべての家庭のエネルギー消費量と電力消費量を半分にする」という点については、まだまだ課題が山積みです。ここから加速度的に進めていかねば目標達成はできません。もっともっとたくさんの人にエネルギー問題の重要性と、それに深く関わる家庭の省エネの意味の大きさを知ってもらい、この1985アクションに参画してもらう必要があります。この5年間を三段跳びの“ホップ”の段階ととらえれば、その一歩目は悪くないジャンプができたと思います。次の5年を“ステップ”としてどう跳ぶのかが問われていると思っています。

この1985アクションは、地域で点をつくり、それを少しずつ面として広げ、最終的にはその小さな面が全国に広がって重なるというイメージで進めています。その最初の点となるのが先に書いた「1985地域アドバイザー拠点」です。こうした拠点としてもっともふさわしいのは「それぞれの地域で、真摯に省エネの住まいと暮らしを提供し、アドバイスできる住宅のつくり手(つまり工務店や設計事務所)」です。もちろん家庭の省エネを進め、アドバイスするには住宅には直接関係のない家電や調理に関わる知識も必要ですが、住宅のつくり手がそうした知識を持てば、それは“最強”の人材・企業になります。
そういう思いで全国の住宅のつくり手に声をかけ、実際に“最強”となった人材や企業が「1985地域アドバイザー拠点」として積極的な活動を始めてくれています。省エネになる新築住宅を提供し、既存住宅の省エネ化を進め、家庭の省エネの大切さを伝える地道なイベントを開催し、地域行政や地域の環境団体とつながる取り組みを行っています。こうした心強い拠点がこのまま増えていくことが、先に書いた“ステップ”という2歩目の中心的な位置づけになります。最近では「近い拠点たち」が自主的に集まって情報交換、勉強会、省エネイベントなどを行うようにもなってきました。心強い動きです。また工務店や設計事務所だけではなく様々な業種の企業が拠点として手を挙げ、ユニークな取り組みを行うようになってきたことも活動の幅を広げることに寄与してくれています。

私の役割は、拠点を中心とした1985の会員に的確なサポートをすることです。私も直接一般生活者に講演をしたりアドバイスをしたりする機会がありますが、それはこの活動の中心ではないし、それによる広がりは大きくはありません。あくまで拠点や会員がそれぞれの地域やネットワークで1985アクションを伝え、目標達成につながる取り組みをすることがこの活動の中心です。私はその活動がうまく行くためのサポートを全力で進めていこうと考えています。家庭の省エネに関連する情報は多岐にわたり、時代による変化も急です。今後ともこうした情報を整理整頓し、理科的な内容とともにコミュニケーション的な側面も含めて提供し続けていこうと考えています。こうした作業は簡単ではありませんが、ますます精進して私の役割をまっとうしようと思っています。

そうした役割の一環として、2015年から「1985公式解説本(書名は未定)」の出版準備を進めています。順調にいけば今年の末には書店に並ぶはずです。この本では、改めて1985アクションを呼び掛けた経緯やその思いを書き、1985アクションで進めている活動内容を詳しくご紹介し、具体的な家庭の省エネを進めるための工夫やポイントも解説します。また3名ほどの著名人やリーダーと私との対談も載せ、省エネに工夫しているご家庭にインタビューするページも設けます。この本を読んでいただければ、1985アクションのすべてがわかるという内容にするつもりです。ぜひ楽しみにしておいてください。

2011年5月に文章を書いたときの気持ちはいまでもまったく変わっていません。とにかくたくさんの人にこの1985アクションに関わってもらい、目標達成に邁進し、「小さなエネルギーで豊かに暮らせる社会」の実現を目指したいと思っています。

PAGE TOP